建設会社の存在意義

スケルトン・インフィル方式というのは、建物の骨格となる躯体部分と内装部分とを分離して計画するマンションの建築手法で、これによって区分所有権がより独立性をもって専有部分を自由に利用できることになると考えられています。
例えば、これまでのマンションでは、ディベロッパーなどが躯体部分も内装部分も一体化して建設し分譲するため、自由に設定することができないという不満が購入する側にありました。 また、購入後に家族構成が変化したり、所有者が替わった時に、利用状況に合わせて間取りを変更することなどは通常のマンションでは容易なことではありません。
これに対して、躯体部分と内装部分を切り離すことで、躯体部分は100年以上の長期的な使用に耐えられるよう耐久性を重視してつくりながら、一方で内装部分については区分所有者の生活内容や家族構成などにあわせて自由設計を可能にしているのです。 さらには将来のリフォームを容易にすることで、物理的な建物や設備の老朽化ばかりでなく、その時々のライフスタイルや社会のニーズに臨機応変に対応することができるため、マンションの長寿命化にも有効な手法として注目を浴びつつあります。

スケルトン住宅では通常のマンションに比べて高い階高を確保して、配管・配線スペースとして二重床、二重天井を設け、どこにでも自由に配管、配線ができるようにして間取りの変更に対応するなどの特徴があります。 問題点として指摘されるのは、階高を確保し、スケルトン部分を耐久性の高いものとするため、当の建設費が従来のマンションに比べて1割程度上昇するなど、競争が激しいマンション市場においてコスト面で購入者に受け入れられるか、という点です。
しかしながら、建物の寿命が延び、中古市場での価値低下も減少する可能性が高いことなどを考慮すれば、購入時に支払う金額ではなく、利用期間全体を通じて支払う金額を重視しようという新しい価値観をもった一定の消費者に受け入れられていくものと考えられます。 特に、このような層は、目新しい設備や共用施設の豪華さでマンションの差別化を図ろうとする今のマンション市場には懐疑的で、自分のライフスタイルに応じて自由な設計が可能なスケルトン住宅を受け入れ、新しいマーケットに育て上げていく可能性があります。
コーポラティブ住宅スケルトン・インフィル方式が今まで画一的な商品提供に傾斜していたマンション市場に、ハード面から新しい流れを生み出そうというものであるとすると、コーポラティブ住宅方式は、マンション建設・販売の仕組みそのものを大きく見直そうという、事業のソフト面に関わる新しい潮流であるということができます。 コーポラティブ住宅とは、一般の分譲マンションのようにディベロッパーが土地を購入して建設したマンションを購入するのではなく、マンションを取得したいと考えている人たちが集まり、共同して土地を購入し、協力して計画をつくり上げて工事を行い、新しいマンションを手に入れるという事業方式です。
既存の分譲マンションでは、購入者側にはすでにでき上がった住戸の中から自分にあったものを選ぶという選択しかなく、計画づくりに参加し、自分が希望する理想の住宅を取得するという満足感を得ることができません。 これに対して、コーポラティブ住宅では自分たちで土地を探して購入し、計画をつくるため、既存のマンションに満足せずに、個々の意向を計画に反映させたいと考える人たちにとっては高い満足感が得られる方法のひとつです。
私も一度、あるコーポラティブ住宅の管理組合に呼ばれて話をしたことがありますが、このマンションでは当初からのメンバーが定期的に各家に集まって、パーティーを行う習慣があるとのことでした。 その効果か組合集会の出席率も高く、各区分所有者同士がとても親しげな雰囲気で、非常に印象的でした。
このことからも、コーポラティブ住宅の最大の利点はマンションでの生活に欠くことができない良好なコミュニティが自然につくられるという点にあるかもしれないと、実感しています。 もっとも自分たちでゼロから建てるのですから、右から左へとものが進むものではないでしょう。
コーディネーター役となるコンサルタントなどの主導により、候補地の選定が行われ、基本計画をもとに事業への参加者の募集が行われる。 説明会や面談を経て参加者が決定する。
参加者により建設組合が設立される。 建設組合はコンサルタントへの業務委託契約、設計業務委託契約、土地売買契約を締結する。
定期的な集会や設計者との個別面談を繰り返しながら計画案をつくり上げる。 設計者は行政との協議などを随時行う。
建設会社との工事請負契約を締結する。 本体工事が開始され、完成後引渡し、入居となる。

新しいマンションの管理組合を結成する。 他方で、事業費などの清算手続を経て建設組合は解散する。
私自身はコーポラティプ住宅の建設に関わったことはまだありませんが、事業化のプロセスを考えると、私が関わっている建替え組合によるマンション建替えとの類似点が非常に多いと思われます。 その経験から、多くの事業参加者をまとめ上げて、ひとつのマンションを立ち上げるためには、経験と実績のある優れたコーディネーターの関与が絶対に必要であると思います。
事業的には土地の購入資金から建築工事費の支払いまでの資金の調達が重要です。 通常のマンションの購入ではマンションの引渡し時に代金を支払えばよいのに対して、自力でマンション建設を行うコーポラティブ住宅では、先行的に資金が必要になるからです。
この点は、住宅金融公庫が独自の融資制度を設けています。 設計面では、上下左右の住戸間との調整に関して設計者の力量が必要であると考えられます。
通常の分譲マンションをみると、上下左右の住戸間で、互いの騒音や振動などが問題化しないように、トイレや浴室などの水まわりや寝室の位置などについて、設計上の配慮がなされています。 それに対して、自由設計をセールスポイントにするコーポラティブ住宅やスケルトン住宅でこの問題をどのように解決するか、設計者としては難しい問題であると思います。

このような困難さを回避するために、当初から水まわりの位置だけは固定する、などのルールを設定する場合がありますが、自由設計との両立は大きな課題であると思われます。 いずれにしても、これからのマンションを考える上で、スケルトン・インフィル方式とコーポラティブ住宅の考え方は欠くことのできない潮流であると思います。
そこでのポイントは「できたものを買うマンション」から「参加して、つくるマンション」への価値観の変化ではないでしょうか。 ハードでの新しい動きとは別に、管理というソフトでも新しい動きはあります。
そのひとつがコンシェルジユです。 首都圏の新規マンション購入者の二人にひとりがシングルの女性というデータがあります。
ひとり暮らしの働く女性に限らず、高齢者、共働き家庭なども増えていますので、人の手を借りたい状況は多々あるでしょう。 そんなニーズに応えて、ホテル並にコンシェルジュを常駐させるマンションも登場しています。

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